日銀の2%物価上昇で、給与は上がるのか?現時点考察
2013年アベノミクスの主役となった金融政策。
日銀は2%の物価上昇を目指しております。
ここで1つ疑問が。”物価上昇は給与アップにつながるのか?”
つながるなら、サラリーマンならウェルカムでしょう。
そこで調べたところ、日銀総裁の考えを発見しました。
なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/ko140320a.htm/
日本銀行総裁 黒田 東彦
2014年3月20日
家計の実感として、「物価が上がるのは好ましくない」と感じることは、極めて自然なことです。日本銀行が家計を対象に実施している生活意識アンケート調査をみると、「物価が上昇している」と感じている回答者のうち8割程度の方が、「物価上昇は望ましくない」と答えています。これは当然の結果です。物価だけを取り出して聞けば、回答者は、賃金を含むそれ以外の条件は変わらないものと想定して答えるのが普通でしょう。もし賃金が変わらないのであれば、物価は下がる方が望ましいに決まっています。
しかし、賃金が上昇せずに、物価だけが上昇するということは、普通には起こらないことです。商品やサービスの価格の上昇により、企業の売上が伸びて、収益が増加すれば、それに見合って、労働者に支払われる賃金は増加します。労働者は、企業の収益の増加に自分たちが貢献した分は、賃金として要求しますので、マクロ的にみれば、名目賃金の上昇率は、物価上昇率と労働生産性上昇率との合計になります。そうでなければ、物価の上昇に伴って、労働者の取り分である労働分配率が下がり続けることになってしまいます。こうしたことは、一時的にはともかく、長く続くとは考えられません。
日銀総裁的には、収益が増加すれば、賃金は増加する、だらか物価上昇は良い事だ、と言っています。
一見すると、そのとおりと思われますし、そうであって欲しい。
では、現状の"労働分配率"はどうなっているでしょうか?
労働分配率の低下を止められるか
http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/research/r130901point.pdf
みずほ総合研究所 副理事長 杉浦哲郎
しかし、現実の雇用・賃金回復の緩慢さには失望させられる。2000 年代以降の雇用・賃金の動きは、非正 規雇用の拡大と賃金の低下によって特徴付けられるが、それはアベノミクス下でも変わっていない。 2013 年 4 ~ 6 月期は正規雇用が前年比 53 万人減る一 方で非正規雇用は106万人増え、非正規比率は36.2% となった。6 月の 1 人当たり賃金は、ボーナス増加に よって前年比 0.6%増えたが、所定内給与の減少幅 (マイナス 0.6%)は再び拡大した。日本銀行「生活意 識に関するアンケート調査」(2013 年 6 月調査)によ れば、勤務先での雇用・処遇に先行き不安を感じている人は、全体の8割を超える。 一方企業収益は、回復している。日銀「短観」(6 月 調 査 )に よ れ ば 、2 0 1 3 年 度 の 企業収益は大きく上方修正され、特に加工型製造業(大企業)の当期純利益 は前年比倍増する見込みである。つまり景気は回復 しているが、その果実は主として一部の企業に集中 し、いまだ家計には及んでいないということになる。 それは労働分配率の低下となって現れている。
グラフは2012年までのデータなので2013年がどうなっているかはまだわかりませんが、
実感値として労働分配率が上がっているようには思えない(利益は倍増していても、給与は比例して上がっていない)のと、他先進国に比べて明かに労働分配率が低いと言えます。
さて、日銀総裁の理論だと、インフレになると労働分配率が低いのは一時的で、長くは続かないそうです。
なので、現時点ではまだ2%物価上昇で給与があがるかどうかはわかりません。
ここで、給与が上がることがどういうことかを考えてみます。
まず、2%物価上昇し、かつ3%消費税がすでにアップしているので、5%負担が増える計算となります(これからさらに消費税があがる可能性がありますが、今回は考えません)。
・給与(可処分所得)が5%以上上がれば、金銭的には豊かになります。
・給与(可処分所得)が5%だけ上がれば、トントンです。
・給与(可処分所得)が4%以下の上昇なら、負担が増えます。金銭的には貧しくなります。
なので、当たり前ですが、可処分所得が何%上がるか、が重要です。
現在の金融政策で物価が上昇しましたが、輸入物価の上昇が主要因であり、このことが可処分所得上昇につながるとは思えません。
インフレと言っても、輸入物価の上昇ではなく、労働賃金上昇から始まるインフレを目指すべきと思います。